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2025/02/01 05:13 |
第106回 独断と偏見で10本を選ぶ(1960年代外国映画ベストテン) 文学に関するコラム・たまたま本の話
第106回 独断と偏見で10本を選ぶ(1960年代外国映画ベストテン)
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映画黄金期の1950年代と、往年の輝きを失い始める1970年代に挟まれて、1960年代の外国映画は大作が多かったように思う。と同時に、1950年代後半からフランスに登場したヌーヴェル・ヴァーグが世界を驚かせ、アメリカではアメリカン・ニューシネマなど、個性的な映画が全盛となった。そんな映画史を横目に見つつ、1960年代外国映画ベストテンを選んでみた。対象は1960~1969年で順不同。ご笑覧ください。(こや)
① ねぇ!キスしてよ
監督:ビリー・ワイルダー 製作:1964年、アメリカ
1960年代のビリー・ワイルダー映画といえば「アパートの鍵貸します」(1960)と「あなただけ今晩は」(1963)が有名だが、ディーン・マーティンとキム・ノヴァクの好演が光る艶笑コメディー「ねぇ!キスしてよ」をここでは挙げる。ジャック・レモンやシャーリー・マクレーンが登場しなくとも、ワイルダー映画はどこを切ってもワイルダー映画だ。原作はアンナ・ボナッチの戯曲「幻惑の時」で、I・A・L・ダイアモンドとワイルダーの黄金コンビが共同で脚色を務めた。
② バニー・レークは行方不明
監督:オットー・プレミンジャー 製作:1965年、イギリス
オットー・プレミンジャー監督、キャロル・リンレー主演。行方不明になった娘バニー・レークを探していく母親や兄の奇妙な振る舞いを描くサスペンス映画で、アルフレッド・ヒッチコックの「バルカン超特急」から影響を受け、「フライトプラン」や「チェンジリング」などに影響を与えた作品とされる。イヴリン・パイパーの原作小説には1889年に発生した「パリ万博事件」が紹介されている。イギリス人の母娘がパリのホテルに宿泊。母親が姿を消し、娘が必死に探すも、「始めから母親はいなかった」と言われた事件である。
③ 恐怖の足跡
監督:ハーク・ハーヴェイ 製作:1962年、アメリカ
一部で多大な評価を得ているハーク・ハーヴェイ監督のカルトホラー映画。度胸試しの自動車のスピード競争で、メリー(キャンディス・ヒリゴス)らを乗せた車が誤って川へ転落。しばらくしてからメリーだけが自力で川から生還、応急処置を受けて一命を取り留めた。悲惨な事故を忘れるためにメリーは別の町へ移り住むことにする。町でオルガン奏者の職も得ることもでき、順風満帆な生活を送ろうとした彼女の身に、次々と不可解な出来事が襲う。町に来る途中で見かけた謎の男の幻影に悩まされ、悪夢は徐々に過酷さを増していく……。
④ 雨にぬれた歩道
監督:ロバート・アルトマン 製作:1969年、アメリカ
年下の青年を愛した中年女性の、母性愛的な心情と、甘くせつない追憶を描いた叙情映画。といっても監督はロバート・アルトマン、一筋縄で行く映画であるはずはない。秋の冷雨にけむるバンクーバー。独身女性フランセス・オーステン(サンディ・デニス)は、公園のベンチでションボリ雨に打たれている無口な青年(マイケル・バーンズ)に心魅かれ、自分のアパートに連れ帰った。青年に愛と肉欲と嫉妬を抱く女性と、女性の財産にしか興味がない青年のドラマの結末やいかに?
⑤ 密室
監督:ピーター・コリンソン 製作:1967年、イギリス
C・スコット・フォーブスの舞台劇「検針員」をテレビ出身の新鋭ピーター・コリンソンが脚色・監督したもので、劇場用映画第1作。ブルース(テレンス・モーガン)とバーバラ(スージー・ケンドール)は夫婦ではないが深く愛し合っている。ブルースは不動産業者。完成したばかりでまだ誰も入居していない家具つきのペントハウス式アパートを密会の場所に使っていた。ある朝、ガスの検針員だと名乗る2人組が部屋に訪ねてくる……。突然の闖入者による暴力や心理的圧迫に、運命の歯車が狂っていく恋人たちの姿を描いた心理ドラマ。
⑥ 嵐の青春(日本未公開、DVD発売)
監督:リチャーズ・ラッシュ 製作:1968年、アメリカ
この映画は日本未公開ながら、かつて「ジャック・ニコルソンの嵐の青春」の日本語タイトルでVHSが発売され、ずっと以前に「都会の中の俺達の城」のタイトルでテレビ放映された。LSD文化発祥の地、サンフランシスコのヘイトアシュベリーを舞台に、ドラッグ・カルチャーにのめり込む若者たちの生態が描かれている。ロジャー・コーマン「白昼の幻想」の亜流とされていたが、ジャック・ニコルソンとスーザン・ストラスバーグの熱演で、本家を超えるドラッグ映画の傑作となった。
⑦ 少女ムシェット
監督:ロベール・ブレッソン 製作:1967年、フランス
ジョルジュ・ベルナノスの小説が原作。暴力的な父親と病気の母親のもとで苦労を重ねるブルーカラーの少女が、どこに行っても相手にされず、ますます孤独に不幸に、そして居場所がなくなっていく様を冷徹な目線で描いたロベール・ブレッソンの代表作の1つ。後の「ロゼッタ」や「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などの作品にも影響を与えたとされる。日本ではなかなか公開のメドが立たなかったが、1974年9月、コロネット・シネマ・アンテレクチュエルが買い付けて提供、エキプ・ド・シネマが配給して、陽の目を見た。
⑧ 沈黙
監督:イングマール・ベルイマン 製作:1963年、スウェーデン
名匠イングマール・ベルイマンの「鏡の中にある如く」(1961)、「冬の光」(1962)に続く、いわゆる「神の沈黙」3部作の最後の作品。 翻訳家で独身の姉とその妹、妹の幼い息子の3人が列車の旅の途上、ある国に降り立つ。冷戦下の共産圏を思わせるその土地では、言葉もほぼ通じない。ホテルで過ごす時間の中で、姉妹がずっと触れることを避けてきた葛藤が次第に露わになっていく……。 閉ざされた空間、限られた登場人物、そぎ落とされた台詞による象徴的なドラマ。日本初公開時には成人映画に指定された。
⑨ 泳ぐひと
監督:フランク・ぺリー 製作:1968年、アメリカ
ニューシネマの傑作の1本とされる。原作はジョン・チーヴァーの1964年の同名短編小説。ある男(バート・ランカスター)が海パン一丁で林の中から現れる。ニューヨーク州マンハッタン島の裕福な高級住宅地のプールを渡って歩き、何人かの知人と会う。最初、人々は彼に好意的だが、次第によそよそしくなる。かつての恋人宅のプールで、元恋人に会うが連れなくされ、次に訪れるプールは安い入場料の市民プールだ。そこでは誰も彼のことを、かつて裕福だったころの彼として扱ってくれない。そして、最後に彼が訪れるのは……。
⑩ コレクター
監督:ウィリアム・ワイラー 製作:1965年、イギリス、アメリカ
原作はジョン・ファウルズの同名長編小説で、言葉遣いから階級や信条、性格が伝わるように書かれた現代文学の傑作である。蝶の収集が趣味の孤独な男性フレディの、美術大学に通う女性ミランダに対する倒錯した愛情を描く。アカデミー主演女優賞(サマンサ・エッガー)、監督賞(ウィリアム・ワイラー)、脚色賞にノミネートされ、エッガーは1966年のゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞した。作中、「ライ麦畑でつかまえて」をめぐる会話に象徴されるように、きわめて文学的な香りが漂う映画。
(こや)


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2020/06/15 09:42 |
コラム「たまたま本の話」

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