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2024/03/29 15:08 |
第99回 続・2001年以降の10本はコレだ!21世紀日本映画ベストテン 文学に関するコラム・たまたま本の話
第99回 続・2001年以降の10本はコレだ!21世紀日本映画ベストテン 文学に関するコラム・たまたま本の話

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前回の外国映画に続き、今回は日本映画編。21世紀の日本映画には黒澤明も小津安二郎もいない。21世紀ならではのテーマがいかに描けているかを基準とした(順不同)。

①嫌われ松子の一生
監督:中島哲也 製作:2006年
山田宗樹のベストセラー小説「嫌われ松子の一生」が原作。修学旅行中に教え子が起こした現金盗難事件を収めるため、その場しのぎの対応をとって教師の職をクビになり、家族とのいざこざから家を飛び出したことから転落して行く、川尻松子の人生を描く。悲劇となるはずの物語が、CG合成によるファンタスティックなミュージカルシーンやコミカルなタッチで綴られる。

②ゆれる
監督:西川美和 製作:2006年
西川美和は21世紀の名匠と呼ぶに相応しいが、中でも長編2作目の「ゆれる」を挙げる。東京で写真家として活躍する弟・猛が久々に帰省し、兄・稔が切り盛りする実家のガソリンスタンドで働く昔の恋人・智恵子と再会する。翌日、兄弟と彼女の3人で渓谷へ遊びに行き、智恵子が渓流にかかる吊り橋から落下する。その時、近くにいたのは稔だけだった。事故だったのか、事件なのか、裁判が進むにつれて兄をかばう猛の心はゆれていく。

③光の雨
監督:高橋伴明 製作:2001年
あさま山荘事件からほぼ30年を経て、初の本格的な連合赤軍映画が作られた。立松和平の小説「光の雨」がベースだが、そのままの映画化ではなく、小説を映画化する模様を描いた作品となっている。つまりは劇中劇。映画に出演する若い役者たちの戸惑いの描写が、30年前の事件に対する現在の若者たちの違和感を浮かび上がらせる。 その後、若松孝二監督が連合赤軍サイドから、原田眞人監督が警察サイドから、同事件を描くことになる。

④みなさん、さようなら
監督:中村義洋 製作:2013年
「アヒルと鴨のコインロッカー」の中村義洋監督が、久保寺健彦の同名小説を映画化。1980年代に団地で生まれたごく普通の少年・悟は、小学校卒業とともに「団地から一歩も出ずに生きる」と決める。中学校には通わず、団地内のパトロールを日課に日々を過ごし、やがて団地内のケーキ屋に就職。同級生と婚約もして人生をそれなりに謳歌していたが、時代の変遷とともに多くの人が団地を去り、悟は1人取り残されていく。

⑤あん
監督:河瀨直美 製作:2015年
河瀨直美監督が樹木希林を主演に迎え、元ハンセン病患者の老女が尊厳を失わず生きようとする姿を紡いだ人間ドラマ。おいしい粒あんを作る謎多き女性と、どら焼き屋の店主や店を訪れる女子中学生の人間模様が描かれる。原作は、詩人、作家、ミュージシャンのドリアン助川。今は亡き樹木や、浅田美代子らの円熟した演技が光る。

⑥ひかりをあててしぼる
監督:坂牧良太 製作:2016年
東京の渋谷で実際に起きた事件がモチーフの舞台劇を実写化したドラマ。監督は、舞台版の演出も手掛けた坂牧良太。友人の巧と共に参加した合コンで、木下智美に心惹かれたサラリーマンの谷中浩平。急速に距離を縮めた2人は結婚して幸せな日々を送るが、虚栄心の強い智美が次第に浩平を翻弄する。激しく憎悪をぶつけ合いながらも離れることができず、関係が破綻していく若い夫婦の姿に思わず引き込まれる。

⑦暗闇から手をのばせ
監督:戸田幸宏 製作:2013年
身体障害者専門のデリヘル嬢の目を通して、障害者たちとの触れ合
いを描く。ドキュメンタリー番組のディレクター戸田幸宏が、自ら取材した内容を元にNHKのドキュメンタリー番組として企画したが、拒絶されたためフィクション化、自己資金で制作にこぎつけたという労作。一般客より楽そうだと、障害者専門に鞍替えしたデリヘル嬢の沙織が、客の家を一軒ずつ訪ねていく、いわばロードムーヴィー。

⑧FAKE
監督:森達也 製作:2016年
「A」「A2」を撮った森達也のおよそ15年振りの単独監督作で、2014年のゴーストライター騒動で話題になった佐村河内守を追ったドキュメンタリー。聴覚障害を抱えながらゲーム音楽などを手掛け称賛されるが、実は耳は聴こえており、しかもゴーストライターによる楽曲を自作として発表していたと報じられ、日本中からバッシングを受けた佐村河内の素顔に肉薄する。

⑨ペコロスの母に会いに行く
監督:森﨑東 製作:2013年
同年のキネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベストワンをさらった秀作で、メガホンを取ったのは日本映画界の大ベテラン、森﨑東監督。主人公、認知症の母みつえ役の赤木春恵は、88歳と175日(クランクイン日の2012年9月5日時点)で本作が映画初主演となり、この出演でギネス世界記録に「世界最高齢での映画初主演女優」として認定された。赤木は2018年11月29日に逝去、この初主演作が映画作品としての遺作となった。

⑩9/10 ジュウブンノキュウ

監督:東條政利 製作:2006年
斬新でスタイリッシュなミステリー室内劇。「カミュなんて知らない」の助監督を務めた東條政利の初監督で、若手実力派俳優たちの臨場感あふれる演技は圧巻の一語に尽きる。 サラリーマンや内科医ら、かつての高校野球部のメンバー9人は7年ぶりに再会する。思い出話に花を咲かせていた彼らだが、それぞれの記憶が微妙に食い違っていることに気づく。9人は昔のスコアブックや写真を引っ張り出してくるのだが……。(こや)


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2019/03/19 15:11 |
コラム「たまたま本の話」

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