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2024/05/19 12:49 |
第110回 独断と偏見で10本を選ぶ(1950年代外国映画ベストテン) 文学に関するコラム・たまたま本の話
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ハリウッド映画が世界を席巻した1950年代。総天然色、ワイドスクリーンで華やかに上映される西部劇、コメディー、ミュージカルなどの大作に目を奪われるが、問題意識にあふれる佳作も数多く作られた。以下は独断と偏見で選んだ1950~1959年製作の外国映画。順不同。ご笑覧ください。(こや)
①夜行列車
監督:イェジー・カワレロウィッチ 製作:1959年、ポーランド
ポーランド中心部の駅から発車する夜行列車は、翌朝バルチック海岸の町に到着する汽車だった……。夜行列車に乗り合せた人々のさまざまな人生模様を描くドラマ。「尼僧ヨアンナ」のイェジー・カワレロウィッチが監督した。謎の黒メガネの男がミステリー映画の雰囲気を漂わすが、アウシュビッツのイメージを想起させるシーンもあり、ハッとさせられる1編。
②非情の罠
監督:スタンリー・キューブリック 製作:1955年、アメリカ
わずか67分のフィルム・ノワールながら、落ち目のボクサーが大物ギャングの情婦を救うというハードボイルドの基本的要素を押さえた逸品。巨匠スタンリー・キューブリックの監督2作目で、ほかに脚本、製作、撮影、編集と1人5役をこなしている。悪夢のシーンはもちろんだが、マネキン工場の対決シーンの映像1つ取ってみても、非凡な演出力に舌を巻く。
③リラの門
監督:ルネ・クレール 製作:1957年、フランス
ルネ・クレールはサイレントからトーキーの移行期に活躍したフランス映画界の名匠だが、第二次世界大戦後も素晴らしい作品を残している。善良だが怠け者の男が、負傷した強盗をかくまうことによって生きる張り合いを得る。その事実を恋人に打ち明けたとき、恋人は強盗の魅力に惹かれて駆け落ちを企てる……。往年のフランス短編小説を思わせる人情悲喜劇。
④十二人の怒れる男
監督:シドニー・ルメット 製作:1957年、アメリカ
父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、12人の陪審員が一室で議論し、ついに無罪評決に達するまでを描く。言わずと知れた密室劇の傑作で、原作はレジナルド・ローズ。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ1人、陪審員8番だけが少年の無罪を主張する。彼の熱意と理路整然とした推理によって、陪審員たちの心にも徐々に変化が訪れる……。
⑤ボディ・スナッチャー/恐怖の街(日本未公開、DVD発売)
監督:ドン・シーゲル 製作:1956年、アメリカ
ジャック・フィニイの名作SF「盗まれた街」をドン・シーゲル監督が映画化した。ある街が宇宙から来た未知の生命体によって侵略され、人々はそれに心と体を乗っ取られてしまっている。おそらく物語の奥には、忍び寄るソ連の共産主義思想に自国の民主主義が脅かされるのでは……という1950年代アメリカの不安構造がある。その後、何回もリメイクされた。
⑥手錠のまゝの脱獄
監督:スタンリー・クレイマー 製作:1958年、アメリカ
手錠で互いに繋がれたまま脱走した黒人と白人の2人の囚人が、当初は激しく反目し合いながらも絆を深めてゆく姿を描く。アカデミー賞脚本賞、同撮影賞、ベルリン国際映画祭男優賞(シドニー・ポワチエ)などを受賞。現在に続く人種問題映画のルーツのような1編で、監督は社会派のスタンリー・クレイマー。「ニュールンベルグ裁判」など硬質なドラマを作った。
⑦シェーン
監督:ジョージ・スティーヴンス 製作:1953年、アメリカ
かつては善(開拓農民のスターレット一家)と悪(牧畜業者のライカー一家)の対立、そして流れ者シェーンと殺し屋ウィルスンの代理戦争の物語だと思った。今見ると、南北戦争後、自分たちが所有していた土地を政府に無償提供しなければならないライカーたちのほうが被害者で、真っ当な主張に思える。アンドレ・バザンが「新たな西部劇」と呼んだ永遠の名作。
⑧雨に唄えば
監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン 製作:1952年、アメリカ
サイレントからトーキーに移る時代を描いたバックステージ(舞台裏)ミュージカルの金字塔。いかに偉大な映画かは、アメリカ映画協会(AFI)が発表したミュージカル映画ベスト第1位、アメリカ映画主題歌ベスト100第3位、アメリカ映画ベスト100第10位、情熱的な映画ベスト100第16位に選出されたことでも分かる。ジーン・ケリーが見事。
⑨お若いデス
監督:ノーマン・タウログ 製作:1955年、アメリカ
一世を風靡したコメディー「底抜け」シリーズのコンビ、ディーン・マーティンとジェリー・ルイスの傑作の1本。宝石盗難事件に巻き込まれた底抜けコンビが、真犯人を追っててんやわんやの騒動を繰り返す。監督は娯楽映画の達人ノーマン・タウログだが、脚本にその後、世界的なベストセラー作家となるシドニー・シェルダンが名を連ねているのが注目される。
⑩愛情物語
監督:ジョージ・シドニー 製作:1955年、アメリカ
ハリウッドには、ミュージカルと一線を画す音楽映画の伝統がある。これは1930年から20年間にわたって甘美な演奏で全米を魅了した音楽家エディ・デューチンを主人公とした音楽映画。ピアニストとして身を立てるべくニューヨークにやってきたエディ・デューチンが一流の音楽家になり、不治の病で死去するまでを、ショパンの名曲に乗せて流麗に描く。
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2021/01/12 14:29 |
コラム「たまたま本の話」

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